乙女ゲーやシチュCDの感想諸々
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FDというよりは本編の補完と壮大な続編要素がメインなお話
・システム
基本のUIは本編通りです
相変わらずメニュー画面が好み。BGM確認が出来るのも嬉しい
ただ全体の設計は大分特殊です
まず、選択肢がひとつも有りません
どのパートも一切の選択肢が無く話が進むため、そう言う意味ではゲーム性は無い
また、個別ルート後のフューチャー以外は制限がしっかりかけられており、公式が指定した順番でしか読む事が出来ません
自分が考えていた予定通りにプレイする…という事が出来ないのはちょっとストレスかもしれない
ただ演出としては非常に面白く、没入感が得られました。ゲーム初回起動時にはOP→例のアイキャッチ→名前入力を終えると問答無用で即話が始まりますし、ユーザーを物語の中に全力で引っ張っていくという意味ではとても良い演出でした
スチル・フラグメント・ガラクタは普通にプレイしていれば全て回収できます。選択肢が無いから当然ですが。なので攻略の上での難易度はほぼゼロです
ただこのフラグメント、ひとつひとつ確認をするのがデザイン的に少々面倒
まず未読を探すのが地味に大変。一応未読は色が付いてるのでそう言う意味では分かりやすいですが、ただプレイを続ければそれだけ数も増えてくるし時系列も割とバラバラに追加されていくのでカーソル移動の範囲が広い
LRで一気に移動も出来ますが、そうすると見落とす可能性もあり、それを避けようと思うとひとつひとつチマチマ移動する事になり、ちょっと面倒
また既読になると色も消えてしまうので、後から「あの話を読みなおそう」と思った時に探すのも一苦労。もうちょっとこう、一発で見付けられる何かが欲しかったかな…
・ボリューム/シナリオ
まずボリュームからですが、アフターに当るフューチャーはメインは1時間半ほどで読み終えられます。ちょっと特殊なクレイドル×2はその半分ほどで、正直短い
アフターストーリーとは言えもう少しの長さは欲しかった
エクリプスは大体3~4時間ほどです。ただエリシオンやデゾイドの設定に関わるフラグメント部分を含むともう少しかかります。あんまり長いのもどうかと思うので、個人的にはこれくらいがちょうど良いかな
その他のフラグメントを全て読もうと思うと1時間半ほどはかかるかと思います。特に過去勢の補完が多いので
シナリオですが、まずフューチャーはFDらしい「甘い後日談」ではありません。各々新たな問題と遭遇し、その解決でほぼ話が終わります。FDらしい甘いエピソードが有ったのはロウと、そもそも更に話が短いクレイドルくらいです。他の3人は正直そのあたりの要素が不足してる
フューチャーの話自体は面白かったんですが、本当の意味での後日談やオマケ要素のSS等が無く甘さ補給がイマイチ出来なかったのが残念なところ。また、フューチャー内での描写不足も少し気になりました。特にアタルヴァルートではそこ重要では?という要素をサラッと説明台詞だけで済ませていて、大分引っかかってしまった。折角話自体は良いんだから、もっと濃く長く描いてほしかった
過去補完のフラグメントでは細かく描写していたのに、メインのアフターでそれが足りていないのは正直バランスとして残念だった
エクリプスは本当に、非常に壮大なお話でした。特に最後のあの纏めはズルい。あそこからもうひとつの物語が始まるあの着地、好きです。ただ本編の時より伏線が増えたままになってるのがちょっと落ち着かない
以下ネタバレ
・ヤジュル
フューチャーの冒頭のモノローグで物凄い満足感を得てしまった
元々攻略対象視点のモノローグが好きなので、ああいう形でヤジュルの内面を改めて知れてうれしい。本編序盤でのシュド達との日常を「愉快なものだった」と素直に言うヤジュル、好き
文句を言いつつも平和な日常を受け入れて、何でも屋で賑やかに過ごしてる様子を見られたのも良かった。そしてイヴがヤジュルの扱いが上手くなっていて笑った。相変わらず振り回されてるなヤジュル…
イヴが余所に行くという話になった時にさも当然の様に着いて行くつもりなのも、一緒にお風呂に入ってるのに驚く程健全な空気を醸し出しているのも好き
トラブルへの対処法も良かった。二度目の遭遇では相手の怒りを受け止めてそこで終わりにさせようとしたのに、それでも引き下がらなかった相手への対応をイヴと話してるシーン、好き。イヴにこういう場合の一番手っ取り早い方法を教えつつも、イヴが簡単にそれを選べないという事は分かっていて、その上で彼女を守るために自分が泥を被ろうとする。序盤から「どのくらいならやっても良い?」と聞いているし、そう言う所にヤジュルの自分はイヴの騎士である、という事への強い拘りが見えた。その上で、ヤジュルにそんな事させたくないと強く思うイヴも良かった
迷いながらも決断し、少しの後悔をしているイヴを「お前はそれで良い」と表現したヤジュルのイヴ観が好き。CGコメントで「お前には綺麗なままでいてほしかったと思っている自分に気付いた」と言っていましたが、そう言う関係性のカップルが好きなので大分テンションが上がった
ステラ特典SSで自分に対して言い訳しながらグルグル考えまくるヤジュルの図には笑った。めっちゃ心配しまくってるじゃん、好き。同じくステラボイス集では朝からイチャイチャしてる様子も見られて大変満足
イヴに裏切られる事を何よりも嫌がるヤジュルですが、この先そんな事は起きないでしょうし、これからも元気に生き恥を晒しながらイヴと一緒に平穏に生きてほしい
・アタルヴァ
冒頭のホラーチックな演出にビビった。おんぶですったもんだしていたヤジュルとの落差が凄い…
「アタルヴァの面白い顔」がきっかけで目覚めたイヴ、アルカディアとの2度目の決着、そしてそれに少しだけ手を貸してくれるロウ…という流れは非常に良かったし、シュドやカーマインも出てきて賑やかで良い話でしたが、でも目覚めた本来のイヴとアタルヴァの会話が少なかったのはやっぱり残念
本編でのあのエンディングを越えた先の二人のやり取りをもっと見たかった…
そして上でも言った通り、アタルヴァルートでのあの病気の少女とのエピソードのあっさり感は納得がいかない
イヴの精神に大きく影響し、クライマックスシーンでも重要なエピソードになったものをあんな説明台詞でおしまいにはしないでほしかった。もっときちんと、少女との交流から彼女の最期までを描いてほしかった。少女の台詞すら無しは流石に…
圧倒的に不利な状況の中で必死に踏ん張るアタルヴァの強さが見られたのは良かったです。戦闘面では基本的に頼りにならない彼ですが、それでも彼もちゃんと強さを持ってると分かるあの自傷シーン好き
彼のルートではカーマインがいい味出してるのも好き。世話を焼きつつも微妙にアタルヴァの扱いがぞんざいなバランスが良い
・ロウ
正直なところ、彼のルートで萌えは得なかった
どうしても私の中でのロウは本編共通・他ルートにおける彼であって、橙イヴと再会して一気に浄化された後の彼には未だに誰おま感が拭えない。加えて橙イヴの方は好きになれないタイプの女性キャラなので、本編同様一歩引いた目で見てしまった
また、橙イヴがシュド・アタルヴァと何の違和感もなく親しくしているのも、スチルで表現されると何とも言えない居心地の悪さが正直有った
ただアタルヴァルートでのロウは良かった。当人ルートで白イヴやアタルヴァの兄弟に対しての「贖罪」の扱いには正直首を捻る所が有ったんだけど、アタルヴァルートでのロウの行動は自然で良い
・クレイドル
まさか唯一の子作りネタが元AIの彼のルートで出るとは……
そしてそれを告げる時のクレイドル(大人)の一切羞恥が無い口調は流石だった。だからこそ、彼の想いの真剣さを感じ取れてとても好き。ただその為に必要な手順の説明に口籠るのは笑った。そりゃあイヴは知らんよね…
大人ver・子供verで話の流れがほぼ同じなのは残念ですが、まぁ致し方ない
過去回想としてロボverクレイドルのスチルが複数見れたのは、本編でロボverEDを望んだ身としては嬉しい限りでした。嫉妬イベの流れは萌えるし、目覚めたばかりで幼女の様なイヴの無邪気さとそれに振り回されるクレイドルには笑った
・シュド
過去に囚われているシュドの精神の切り替えが出来たのは良かったんですが、そこに至るまでにやきもきしてしまった
迷い、間違え、でもそこから修正し這い上がり成長するのはシュドのキャラクターとぴったりで良いんですが、でもそれって本編でもやっている事なんですよね。そう言う意味でまたか…と思ってしまったし、過去の存在に囚われるシュドに対して今を見ろや!とも思ってしまった。なのでまぁ、ラストのイヴとのシンクロ率は高かったのでそこに関しては良かったけれど
本編を経て成長したシュドの強さ、カッコよさをもう少し見たかったな…。他のメンバーは割とそう言う要素が有ったので、シュドにも期待していたんだけど
シュドの弟のエルは良いキャラしてましたね。女の子の扱いに不慣れで仕事を優先しがちな兄のケツを叩く弟、いい。そんなエルのピンチを救ったのが、かつてのシュドを指導した彼というのもなかなか感慨深い
あとは元軍人の彼もいい味を出していた。今後は彼のサポートを得つつ、きちんと前を向いて生きて行けそうでほっとする
・エクリプス編
思っていた以上に壮大な話だった…
初期に拾えるフラグメントでユーリが喋った瞬間、「お前かぁー!!!」と思ってしまったのはオタク歴が長い以上仕方ない……。ただの兼役やミスリードの可能性も有りましたが、結果的に割と素直にそのまま正体に繋がったので、無駄に混乱する事無く素直に理解出来たのはまぁ良かったかな
6人全員でティアブレイドの中に入って月まで行ったのには笑った。鮨詰め過ぎるわ。そして1週間とかトイレやらなんやらはどうしたんだ……その辺は考えてはいけないポイントなんだろうか…
序盤の戦闘シーン、大分ピンチなんですがコックピットでみんなでぎゅうぎゅうになってると思うと一気に和んでしまって少々困った
てっきり一本道かと思ったら一応分岐が有ったのは予想外だったのも有り嬉しかったです。やっぱりそれぞれの攻略対象とのやり取りを見られるのは嬉しい
悩むシュド、羞恥心が薄く物理的距離感の近いアタルヴァ、正論と皮肉をかますヤジュルとそれぞれの個性が見えたのも面白かったです
新キャラ二人、特にエリシオンに関してはフラグメント全て読まないと設定を把握出来ないですが、そっちで説明している分エクリプス編ではややこしい説明は出来るだけ省いてテンポよく話が進むのも良かったです。色々込み入っているので、あれをエクリプス編で全て一から説明されたら余計混乱しそう
デゾイドの最期はシュドルートとヤジュルルート、どちらの方が彼にとってより救いだったのかな…。素直に考えたらかつての自分が鍛えた存在との再会でしょうが、ただ過去の自分と敵対した相手に殺され損ねるというのも、大きな救いに思えます。ここで獲得できるトロフィーの説明的にも
ただどちらにしても彼はある程度満足して消えていったんでしょうし、長い長い戦いの最後で彼にとって縁のある人間に再び会えたというのは大きな事だと思うので、彼の物語のラストとして良い形だと思えました
クレイドル・ワンも良いキャラしていて気に入りました。げっ歯類の観察、笑った。そしてそれをクレイドルに見せて嫌がられたのにもっと笑った。トラウマ刺激するのはやめてあげて
ただこのげっ歯類の観察は、やっぱりかつてのクレイドル同様に「寂しい」という気持ちが有ったからこそのものなんだろうし、そう考えると切なくも感じる。ED後は橙イヴに対してある種の厳しさを発揮していて、やっぱクレイドルの兄弟なんだな…としみじみ思ってしまった
エリシオンの設定に関してはフラグメントを読んでもまだちょっと理解が及ばない所が有るのが悔しい。自分の頭の悪さが残念過ぎる。過去の例の3人の設定や、ロウが知ってる伝承に微妙に違いが有るのも含め、色々と気になる所が有ります
彼個人のあのふわふわとした雰囲気と、なんだかんだで人間味が少しあるバランスが気に入ったので、過去イヴやシュド達とのやり取りをもっと見てみたかった
あらすじを見た段階で察せられてしまったとはいえ、ラストの締めは良いですね。お約束だからこその良さが有る。「乙女ゲーム」という土壌では無理でしょうが、あそこからまた新たに始まる物語をどこかで見られたら嬉しい
補完の物語として見るとなかなかに壮大で面白い作品でした
ただFDとして考えると物足りなさが有るのがやはり残念なので、今後何かしらの媒体でその部分の補完が出来たら良いなぁ
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木下あんこ
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